■並行輸入について(商標編)

 
 違法な並行輸入とはどんなもの?


今、便宜上「違法な並行輸入」と言いましたが、違法な並行輸入という言葉は正確ではありません。商標権を侵害する輸入と並行輸入が存在しているだけです。ただ、偽造品の輸入など、多くの商標権を侵害する輸入が並行輸入だと称して行われていることも事実ですし、並行輸入だと信じて行っていたものが、司法の場で争った結果、違法との判決を受けたとか、混沌とした状態が続いて来ました。

「初めから違法と判断されたケース」や「時代と共に違法とハッキリ判断されてきたケース」などありますが、主なポイントは下記の通りです。(ちょっと読むと分かりづらいと思いますが、それぞれ簡単な図がありますので参考にしてください。)
  1. 権利者や権利者から製造・販売許諾等を受けた者が販売した製品でない場合
  2. 権利者から販売の許諾等を受けている者が権利者もしくは権利者から製造許諾等を受けている者以外が製造した商品を販売した場合
  3. 税関が通関を許可した商品でも、権利者や権利者から製造・販売許諾等を受けた者が製造・販売した商品ではないもの
  4. 権利者から製造の委託を受けていても販売許諾を受けていない者が販売した商品
  5. 権利者から製造・販売の許諾等を受けた者が下記の行為を行った上で製品の販売を行った場合
    • 製造・販売の許諾等の契約で認められた種類以外の商品を製造・販売した場合
    • 製造・販売の許諾等の契約の期間外に製造・販売を行った場合
    • 製造・販売の許諾等の契約で製造する際に製品の見本や図面を権利者に提出し事前の承諾を得ると定められているのに、これを行わなかった場合
    • 製造・販売の許諾等の契約で製造地域の指定がある場合に、この地域外で製造した場合

1については説明の必要はないでしょう。要するに完全なる偽造品であると言うことです。
2の状況は、例えば、権利者から販売の許諾を受けている免税店などが、権利者以外の仕入れ先からも商品を仕入れており、その商品が偽造品で、この商品を第三者に販売した場合を言っています。当たり前に偽造品ですから説明は不要のように思われますが、もめることがあります。「正式の販売契約を結んでいるところから仕入れた商品が偽造品の訳がない」とか、「偽造品を販売するような所と契約を結んだ権利者側に責任がある」とか理屈を付けて自分の犯した罪を逃れようとする人達がいるからです。しかし、どの様な理由があろうと商品は偽造品であることに変わりがありませんから、違法なものです。問題がある商品を消費者であるあなたが買わされたとしたら・・・、そんな理由は関係ないですよね。

32とよく似た状況です。税関が通関を許可したからと言って偽造品は偽造品、本物にはなりません。消費者の立場で考えれば明白です。税関が認めたものだからと言っても真贋については何の影響もないことは大阪高裁平成13年(う)第876号(*注5参照)の判決で明白に述べられています。

注5:某イタリアブランドの偽造品を兵庫の輸入業者が販売したことに対する刑事事件の判決で、業者側は工場から購入したもので本物だし、税関は課税した上で通関したのだから国が本物と認めたものだと主張した。

4の状況は、製造の委託を受けた工場で販売許諾を持っていないところが販売した場合を言います。商品は全く同じであるということは余りないので、少々無理がありますが、全く同じである場合を想定して考えてみましょう。この場合、商品は同じですから一般に言う「偽造品」という言葉は適切と感じられなくなります。しかし、商標権の内の一つの権利にすぎない製造権を有しているが販売権を有していない者が、まだ一般の消費流通の流れに乗っていない商品、難しく言うと商標権が消滅していない段階で、権利者に無断で販売した場合、商標権の内の一権利である販売権を権利者に無断で使用したことになり商品は商標権侵害物品となります。例えば、権利者側は工場で製造された物を自身で検品し権利者として満足のいく商品のみを流通経路に乗せると想定すると、この過程を通っていない商品は問題のある商品と言うことになります。ですから、商品は同じであっても並行輸入に関する判決が違法でない条件として要求する「同一」とは言えないのです。いわゆる「工場からの横流し品」が商標権侵害の物品であることは、大阪高裁平成13年(う)第876号の判決(*注5参照)で明白に述べられています。

5については、ここまで読んでくださった方には、「製造・販売の許諾等の契約で認められた種類以外の商品を製造・販売した場合」や「製造・販売の許諾等の契約の期間外に製造・販売を行った場合」、「製造・販売の許諾等の契約で製造する際に製品の見本や図面を権利者に提出し事前の承諾を得ると定められているのに、これを行わなかった場合」については何故違法なのかの説明する必要はないでしょう。「製造・販売の許諾等の契約で製造地域の指定がある場合に、この地域外で製造した場合」については、もめにもめて、平成15年2月27日に言い渡された最高裁判所のフレッド・ペリー判決(平成14年(受)第1100号)で結論がでて違法とされました。商品の品質管理を権利者側が出来ないということが消費者の立場からみれば一番納得の得られる説明のはずです。

これらの全ての場合で、何故違法なのかということを問題にするよりも、商品の購入をして日本に輸入しよう、もしくは、輸入した者が、自分がこれらの場合にあてはまるかどうかの確認が出来るのかと言うことが問題であると考えるべきでしょう。でも、確認が出来ないから、もしくはしにくいからという理由のみで「何もしなくてもよいし商品は合法である、消費者の方々に対して責任がない」ということにはなりません。どの様な理由があろうとも商品自体に何の変化も生じないことは繰り返し申し上げました。確認がしづらくとも、輸入者には確認義務があるはずであり、その確認義務を果たした度合いによって、確認義務をある程度果たした者の責任の度合いが軽減されることがあっても、違法な商品であることに変化はないと考えるべきです。どの程度の確認義務があるのかとか、どういった方法が妥当なのかについては、今後、議論され確定していくことでしょう。消費者の立場としては、しっかりと確認の出来た商品のみを販売してくれることを望むしかありません。

商標権の侵害物品の販売は公序良俗に反する行為であり、販売契約そのものが無効です(最高裁平成12年(受)第67号*注6参照)。偽造品を売りつけられた人間はその代金を支払わなくていいことになりますし、支払った代金は返金してもらうことが出来ます。偽造品の販売をした人間は何も得られないことになります。しかし、返金の交渉や偽造品であることの立証など煩わしいことが発生しますし、悪質な業者の場合は、果ては計画倒産をして逃げ出すなどという事例も発生していますので、違法な商品に関わらないようにくれぐれもご注意ください。

注6:九州の販売店が偽造品を売りつけられたとして、商品を販売した卸業者に対して商品代金の支払いを拒否した民事事件


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