■ 米国製コンバースの輸入・販売が法律に抵触する理由

なぜ米国製コンバースが輸入・販売できないのかについて説明します。


正確且つ詳しくご理解を頂くためには、
平成22年4月27日言渡しの知的財産高等裁判所の判決(平成21年(ネ)第10058号)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100608152746.pdf 
を確認していただくことが良いのですが、難しい法律的な言い回しを避けて説明すると
「日本の国内権利者と米国権利者はつながりがない、日本国内の権利は日本の国内権利者が持っている、従って米国権利者が製造・販売したものは日本国内で販売できない」
という事です。

上記のような結論に至る経緯を理解するためには次のことを知る必要があります。
*下記の内容は、上記の結論を理解して頂くために商標のもつ機能や法律の原則を一般的に説明するもので、コンバースの国内権利者と一切関わりなくユニオン・デ・ファブリカンが独自に記述するものです。

A)商標の機能


商標の機能としては、以下の四つが挙げられます。


−自他商品・役務識別機能
−出所表示機能
−品質保証機能
−広告・宣伝的機能

「自他商品・役務識別機能」とは、自己の商品/サービスと他人の商品/サービスを区別する働きを指し、他の三つの機能の土台となります。
「出所表示機能」とは、市場で例えば消費者に対して「どこのだれが作ったのか」を知らせる働きを指し、
「品質保証機能」とは、市場で例えば消費者をして「同一商標が付された商品・役務は同一の品質であるという期待」を抱かせる働きを指します。


要するに、他の商品と区別させ、誰が製造したのかを、誰が品質などの責任を持っているのかを消費者に知らせるために商標は存在します。

B)商標の属地主義


法律の適用範囲や効力範囲は、一定の領域内ごと、例えば一つの国ごとにのみ及ぶという考え方を「属地主義」と呼びます。
簡単に言えば、原則として、日本国の法律は日本国内のみ有効であり他の国では日本の法律は効力がないと言うことです。考えてみれば当たり前で、他国で法律に抵触する行為だからと言っても、同じ行為が日本で法律に必ずしも抵触するとは限りません。

商標に関しては、日本国の商標法に基づき登録され権利が認められた商標権は日本国内のみ有効であるという事になります。日本以外のX国の法律に基づいて発生した商標権はX国の国内のみで有効になります。

商標に関する「属地主義」は、パリ条約で確認されていますので、これは大原則で変えようがありません。
実際、日本の権利者とインドネシアの権利者が全くのつながりのないものであった商標に関係して、九州の某チェーン店が「インドネシアで商標登録がある」と製品に説明し販売した事案を警察が摘発し有罪となっています。

C)並行輸入


上記の「A)」と「B)」を理解すると、あるブランド「○○○」の事例で考えると、○○○のX国権利者と日本国の○○○権利者が同一であるか同一に等しくなくてはならない、そうでないと、日本国内に流入したX国の○○○の商品は、日本の国内権利者から品質のコントロールされていない、日本の国内権利者が有しているブランドコンセプトが反映されていない商品が流通してしまう、消費者が商品に対する責任を問うべき相手が誰だか消費者にとって判然としなくなる等々の問題が発生します。

最高裁判所は、並行輸入の違法性が阻却される一つの要件として「外国における商標権者と我が国の商標権者が同一であるか又は法律的もしくは経済的に同一人と同視し得るような関係にある事」を求めています(最高裁判所平成15年2月27日第1小法廷判決、フレッドペリー事件判決)

D)コンバース国内権利者と新米国コンバース社との関係

コンバースの権利等についての沿革は、以下の通りになります。


昭和39年 旧米国コンバース社が日本で靴を販売開始
昭和56年 月星化成がライセンスを受けて国内で製造販売
平成11年 現国内権利者が靴以外の商品の商標権を譲受け
平成13年 旧米国コンバース社が倒産

同年     新米国コンバース社が旧米国コンバース社から靴の商標権を取得し、現国内権利者に譲渡
平成15年 米国ナイキ社が新米国コンバース社を買収

コンバースの場合、日本の国内権利者とアメリカ合衆国権利者が、同一もしくは同一と考えられる関係にあるのか、もっと具体的には、相互若しくは一方的であるにしてもそれぞれの製造する製品の品質をコントロールできる立場にあるのかも問題となりました。

前出の裁判では上記他様々な要件を勘案し、結論として、日本の国内権利者とアメリカ合衆国権利者は「同一もしくは同一と考えられる関係にない」としています。

日本の国内権利者は、日本工業規格を充足させる且つ取引先の要望を満たすなどの理由からかアメリカ合衆国権利者よりも厳しい基準を設け、アメリカ合衆国権利者では定めていない基準を設けるなどして製品を製造しており、アメリカ合衆国権利者は独自の基準での製造をしているなどのことも判決では述べられています。当然、品質面でアメリカ合衆国権利者の製品が日本の国内権利者のコントロール下にはないと考えるべきです。従って、日本の国内権利者は自らが品質の保証ができない製品が市場に流通している、自らの商標の品質保証機能が害されていると解されるというのが結論です。

即ち、「米国製コンバースを輸入・販売する行為は商標権を侵害する」と言うことになります。


尚、前出の裁判では、税関で通関している事実を並行輸入の違法性を阻却するものとの主張がされていますが、「税関により輸入を差し止められなかったことをもって、並行輸入を適法と解する根拠とすることはできない」としています。

蛇足ですが、当該の裁判では、「被告は、並行輸入を主な業務とする会社で,海外の著名商標の付された商品を主に取り扱ってきたものであり,商標に関する一般的知識や,具体的な商標権の帰属等についての知識を有していたものと推認され,並行輸入を行うに当たり,日本の商標権者の商標権を侵害することがないかどうかについて注意を尽くすべき立場にあった」としていますので、並行輸入品を輸入される立場であるならば相応の責任があると理解をしなくてはならないこと承知して下さい。

上記についてご質問がある場合は、ユニオン・デ・ファブリカン宛 info@udf-jp.org までお問い合わせ下さい。


■よくいただく質問


:コンバースの服に関しても同じですか?


:コンバースについては、権利関係については服と靴でほぼ同じですから、日本の権利者が製造・販売した物品でなければ日本国内で輸入・販売できないと考えるべきです。

Q:どの国で製造した物品が販売可能でどの国で製造した物品が販売不可ですか?


A:どの国で製造したかは問題ではありません。日本の権利者が製造・販売した物品かが問題で、日本の権利者以外が製造・販売した物品は日本では輸入・販売できません。日本の権利者が製造・販売した物品が日本国外で販売された場合は、基本的に、商標権侵害物品になりますので、日本国外では原則として販売されていないはずです。又、日本国外で日本の権利者からの委託を受けて製造している工場等は、販売する権利は持っていませんから工場から購入した物品を販売すれば商標権を侵害することになります。即ち、実質的には国内で購入した日本の権利者が製造・販売した物品以外は販売できないことになります。

Q:コンバースの日本の権利者が製造・販売した物品の販売に問題はありますか?


A:国内で購入した日本の権利者が製造・販売した物品、靴も服も問題ありません。オークションやショッピングモールを主宰するプロバイダより輸入したコンバースの販売についての通知があったかもしれませんが、対象としているのはあくまで「輸入したコンバースの販売」です。

Q:販売可能な物品と販売不可の物品との見分け方を教えて下さい。


A:
守秘義務が課せられている関係(一般に偽造品と真正品との見分け方を公表しますとより精巧な偽造品を誘発するとの観点から公開をしないのが普通です)から全てを開示することはできませんが、以下の事は開示可能です。

以下の物品については販売が可能です。
−靴の箱に添付されているシール右上に「JPN」が印字のあるもの
−靴のタン(ベロ)部分裏のラベル右下に「JPN」の印字があるもの

注意:上記は、「キャンバス オールスター HI & OX」の定番カラー(ホワイト、レッド、ブラック、ネイビー、オプティカルホワイト、ブラックモノクローム)の場合です。上記以外の製品についても、日本国内で販売が可能な物品には、原則として、いずれかの箇所に「JPN」の刻印が付されています。


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